みんなの乗馬TOP馬の豆知識> 馬の種類(軽種)

馬の豆知識

馬の種類(軽種)

軽種は主に競走馬や乗用馬として使われる、軽くて素早い動きができる品種でスピードに秀でています。

軽種の体重は約400kg~500kgぐらいでスマートな体型が特徴です。

ここでは軽種馬の代表的な品種をご紹介します。


サラブレッド(Thoroughbred)

サラブレッド01

サラブレッドはイギリスで18世紀初頭にアラブ馬やハンター(イギリス在来で狩猟に用いられた馬種)から競走用として品種改良された馬種で、体高はおよそ160cm~170cmで体重は450kg~500kgが標準的です。

主な毛色は鹿毛・黒鹿毛・栗毛・芦毛・青鹿毛・青毛・栃栗毛などがあり、ごく稀に白毛も見られます。

サラブレッドは速く走ることを目的として交配と淘汰を繰り返して進化してきました。

人が作り出した最高の芸術品とも言われており、頭は小さく四肢は長く、身体はスマートでなおかつ胸や臀部の筋肉は発達しており速く走ることに向いている体型になっています。

しかし、その分ケガをしやすく気性も繊細で物音などにも敏感に反応したりと肉体的にも精神的にもデリケートな面を持っています。

サラブレッド02

現在は世界中の各国で生産が行われており、主な生産国はアメリカ・オーストラリア・アイルランド・日本・イギリス・アルゼンチン・フランスなどで、血統の良い馬や競走で優秀な成績を残した馬は億単位で取り引きされることもあります。

サラブレッドは競走用としてだけでなく、乗用馬としても活躍しておりほとんどの乗馬クラブで飼育されているので触れたことのある人も多いでしょう。

ちなみにサラブレッド(Thoroughbred)という言葉の語源は、thorough(徹底的な)とbred(育てられた)という単語から成っています。

アラブ種(Arab、Arabian)

アラブ種01

アラブ種はその名の通りアラビア半島が起源で、およそ2000年にも渡りベドウィン(アラブ系遊牧民)たちの手によって改良を続けられた馬種で、体高は約140cm~150cm、体重約400kgとサラブレッドより小柄で華奢で速力も劣りますが、耐久性や耐候性に優れています。

毛色は鹿毛・栗毛・芦毛・青毛などがあります。

アラブ種は現存する馬の改良種の中で最初に確立した馬種とされており、世界の馬種に最も大きな影響を与えたと言われています。

1500年代以降にヨーロッパに多く持ち込まれ、アラブ種を元にして成立した馬種も多く、サラブレッドやクォーターホースなどもこのアラブ種を元にして作られました。

近世初期にはポーランドが改良の中心でしたが、その後エジプトやイギリスに広がり、1900年代に入るとアメリカが改良の中心になりました。

アラブ種02

また、アングロアラブという馬種もありこちらは昔は競走馬として多く用いられ生産もされてきました。(現在は競走馬としては使われておらず、生産もほとんどされていません)

しかし、アラブ種に関しては日本ではあまり普及しなかったために、日本でアラブといえばアングロアラブのことを指すことが多く、アラブ種に関しては「純血」アラブと言わないと通じないことがあります。

アングロアラブ(Anglo-Arabian)

アングロアラブ01

アングロアラブはサラブレッドとアラブ種を掛け合わせて作られた馬種です。

原産はイギリスですが、主にフランスで活発に生産が行われてきました。

サラブレッドは気性が激しい馬が多く、またスピードを追求するために体質が弱い馬も多いのでそれを解決するために頑丈で従順なアラブ種を掛け合わせることで、サラブレッドの持つ弱点を解消し頑丈さと温厚な気性、そしてスピードを得たのがこのアングロアラブです。

アングロアラブはヨーロッパを中心として各国で生産が行われており、競走馬としてや乗用馬として使われてきました。

抜群の跳躍力があることから乗馬の障害飛越競技にも使われています。

アングロアラブ02

アングロアラブは戦前の日本ではその丈夫さと温厚な性格から軍馬としての生産が推奨されてきました。

当時の競馬の存在意義もスポーツとしてではなく、軍馬の質を向上させるという目的で行われていました。

しかし、戦後になり軍馬としての需要がなくなるとアングロアラブはサラブレッドに比べてスピードが劣るために競走馬としての人気が落ち、現在の日本では競走用としては使われなくなり生産もほとんど行われないようになりました。

日本ではアングロアラブと認められるのはアラブ血量が25%以上であることが条件で、アラブ血量が25%に満たない場合はサラブレッド系種という扱いになります。

また、サラブレッド以外にもセルフランセとの混血種なども存在しています。

アハルテケ(Akhal-Teke)

アハルテケ01

アハルテケはトルクメニスタンが原産の馬種で、現存する馬種のうち最も古い歴史がある馬種のひとつと言われており、その容姿の美しさから別名「黄金の馬」とも呼ばれています。

アハルテケの体高は約147cm~163cmで毛色は月毛や河原毛が多いですが、鹿毛や青毛、さらには栗毛、佐目毛や芦毛も見られます。

真っすぐな頭部、長い耳とアーモンド型の眼を持ち、背中は長くスリムな体型をしています。

「黄金の馬」と言われるアハルテケの最大の特徴はやはりその光沢のある毛づやでしょう。

この光沢は明るい鹿毛や月毛、河原毛で見ることができます。

原産地であるトルクメニスタンは国土のおよそ70%がカラクム砂漠という砂漠で占められており、アハルテケのこの毛色は砂漠でのカモフラージュとして機能していたのではないかと考えられています。

また、砂漠が多いために十分な食物や水が得られないトルクメニスタン地方の過酷な条件にも適応しておりタフで丈夫です。

アハルテケ02

アハルテケの今現在の頭数は約3500頭でトルクメニスタンの他に、ロシアやヨーロッパ、オーストラリア、北アメリカなどで飼育され、特にロシアで人気となり国立牧場で育成繁殖が確立しました。

その歴史の古いアハルテケの血統は現在のサラブレッドの三大始祖であるバイアリータークなど様々な馬種に影響を与えたと言われています。

アハルテケは見た目が美しいだけではなく、運動能力も非常に高くマラソンランナーのような無駄な肉のないスリムな体型をしているので持久力にも優れています。

その運動能力と持久力からアハルテケは馬場馬術や障害飛越競技、エンデュランスなどの競技で活躍しています。

また、アハルテケはプライドが高くたった一人の人にしか懐かないとも言われています。

リピッツァナー(Lipizzaner)

リピッツァナー01

リピッツァナーは16世紀にオーストリアで品種改良によって作り出された馬種です。

リピッツァナーの名前の由来はこの品種の生産を開始したオーストリアのリピッツァ牧場からきています。

この品種はオーストリアにいたアンダルシアン(アラブ種、バルブ種、13世紀のスペインの在来馬)の流れを汲むカルスト種と、同じくアンダルシア馬の流れを汲むイタリアのネアポタリノ種を交配することで誕生しました。

リピッツァナーの体高は約150cm~160cmで毛色は芦毛が大部分を占めますが、鹿毛や栗毛、粕毛なども見られ、肉体面では丈夫さと柔軟性を兼ね備えており精神面でも忍耐強さと優れた感受性に特徴がありとても賢い品種です。

オーストリアの王立牧場で飼育されるようになったこの品種は主に古典馬術用の馬として改良が進められ、リピッツァナーの生産が開始された目的のひとつに当時は王室に気品のある馬を供給することにありました。

16世紀末から18世紀半ばにかけては軍馬としても使われており、世界最良の軍馬のひとつと言われていました。

今現在でもリピッツァナーは乗用馬として活躍しており、オーストリアのウィーンにあるスペイン乗馬学校の馬場馬術で用いられています。

リピッツァナー02

頑丈な馬体、特に後肢が強靭なのでその場で足踏みをするピアッフェや躍動感のある速歩であるパッサージュといった運動も得意で、スペイン乗馬学校でのリピッツァナーの馬術公演はとても優雅で芸術的です。

スペイン乗馬学校では朝の調教の見学も可能とのことですので、ヨーロッパへ旅行する機会があれば見ておいて損はないでしょう。

トラケナー(Trakehner)

トラケナー01

トラケナーは18世紀にプロイセン王国(現在のドイツ北部からポーランド西部)で品種改良され作り出された馬種です。

なお日本ではトラケーネンと呼ばれることもありますが、これはトラケナーを生産したトラケーネン牧場の名前が品種名と誤解されたものです。

プロイセン王国はオーストリアで育成されていたリピッツァナーに対抗する軍馬の育成を目的としてトラケーネン牧場を開設しました。

トラケーネン牧場は繁殖牝馬をおよそ500頭も繋養する大規模な牧場で国家的規模で生産と育成を行いましたが、その牧場で地元の在来馬であるシュヴァイゲン種とポーランドから買収したアラブ種を掛け合わせて誕生したのがこのトラケナーです。

トラケナー02

トラケナーはスピード、持久力ともに優れており18世紀半ばにはリピッツァナーと共に世界最良の軍馬のひとつとして認識されていました。

19世紀後半になるとスピード能力に優れたサラブレッドにその地位を譲ることになりましたが、トラケナーは現在も馬場馬術用の馬として品種改良が続けられ活躍を続けています。

アンダルシアン(Andalusian)

アンダルシアン01

アンダルシアンはスペインが原産の馬種で700年代にイベリア半島の在来馬に北ヨーロッパ原産の大型馬、北アフリカ原産のバルブ種が掛け合わされて作られた馬種です。

体高は約150cm~160cmで、毛色は大部分が芦毛ですが鹿毛や青毛なども見られます。

アンダルシアンは別名「スパニッシュホース」とも呼ばれ、スペインの闘牛士の伝統的な乗用馬として使われてきました。

スペインの他にもイギリスやデンマークなどで王室用馬の基礎として使われているように見た目も優雅で高貴な品種といえるでしょう。

またアンダルシアンを元にして作られた品種も多く、アラブ種などと共に世界の馬の品種改良に貢献しました。

アンダルシアン02

アンダルシアンの背中は長めで、胸は厚く、豊かな尾の毛とウェーブのかかったたてがみが特徴です。

また、アンダルシアンは強靭な脚と柔軟な関節を持っており軽やかな歩き方や様々な動き方ができ、性格も従順なために高等演技にとても適しています。

アンダルシアンは日本でも飼育されており、馬事公苑などではアンダルシアンホースダンスといって音楽に合わせた様々な演技を見ることができます。