馬の豆知識

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馬の五感

五感とは「視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚」の五つのことを言い、人間や動物などに備わっている感覚機能です。

動物によって五感の鋭さや発達具合などは異なっており、それぞれの動物の生活環境などによって五感は進化してきました。

ちなみに人間では第六感と言われる霊感や予知能力などがあるという人もいますが、馬に第六感があるかどうかは定かではありません。

もしかしたら霊感の強い馬も中にはいるかもしれませんが(笑)

ただ、馬は乗っている人の気持ちを察知すると言われていることからも第六感のようなものを持っていても不思議ではありませんね。

さすがに第六感は科学的には解明するのが難しいので、ここでは馬の五感「視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚」について解説します。

馬のキャラクター01

馬の視覚

馬の顔のつくりの特徴のひとつに目のついている位置があげられます。

他の動物と比べてみても両目の間隔はかなり離れており、ほとんど頭部の真横に目がついていると言ってもよいぐらいです。

もちろんこういう目の位置であることには大きな理由があります。

馬は草食動物であり野生で生き抜くためには常に肉食動物から逃げ延びなければいけませんでした。

横に目がついていることによって視野が広がり、忍び寄ってくる天敵をいち早く察知することができるのです。

それに加え、瞳孔が横長に開いていることにより馬の視野はなんと350度にもおよびます。

( ちなみに人間の視野は約200度 )

ということは馬は真後ろ以外のほとんどの範囲は見えていることになりますね。

さらに、単眼視(たんがんし)といって左右それぞれの目で別のものを見ることができるという特徴もあります。

なので草を食べているときでもシッカリと周囲を警戒することができるのです。

また馬の目の中にはタペタムという器官があり、これによって夜など暗いところでもよく見えるしくみになっています。

馬の目

これだけ見ると馬の目は長所ばかりのようにも思えますが、欠点もあります。

馬は視野の約80%は片目で見ており、焦点を合わす筋肉も発達していないために視覚による距離の感覚があまりよくつかめません。

なので、遠くのものを見るときは頭を下げて上目づかいのように見て、逆に近くのものを見るときには頭を上げて焦点を合わせようとします。

これに対して肉食動物の両目は顔の正面についており草食動物ほど視野は広くありませんが、視覚による距離の感覚がつかみやすくなっています。

このように草食動物、肉食動物それぞれの野生の生活環境によって生き延びていくために目の役割もそれぞれ異なっているのです。

馬の聴覚

草食動物である馬は目で周りを見ると同時に耳で周りの物音を聞き取って危険から逃げ延びなければいけませんでした。

そのため馬はとても音に敏感な動物です。

馬の耳のまわりには10もの筋肉があり、まるでレーダーのように左右別々に耳を180度クルクルと動かすことができ、あらゆる方向からの音を聞いています。

人間は音の周波数が20キロヘルツを超えると聞き取れなくなるとされていますが、馬は30キロヘルツぐらいまでは聞き取れると言われています。

ただ、低い周波数での聴力は馬は人間より劣っています。

競馬で顔にマスクをつけている馬がいますが(メンコという馬具)、あれはマスクで耳を覆うことにより周りの音を聞こえにくくして落ち着かせる効果があります。

また、馬の耳は感情を表します。

「この馬は今、何を考えているのかな?」という時は耳の動きを見ましょう。


【 耳を立てて前方に向けている 】

前方にあるものに注意や関心を向けています。

特に初めて見るものや見慣れないもの、初めて聞く音などがするとこういう耳の動きをします。

「大丈夫だよ」とやさしく声をかけてあげましょう。

馬の耳01

【耳を横に向けている】

リラックスしていて普通の状態です。

ただ、体調が悪い時とも似ているので目や表情なども見て体調を判断しましょう。

馬の耳02

【耳を後ろに伏せている】

怒っていたり、周りを威嚇する時は耳を後ろに倒します。

噛んだり蹴ったりしようとすることもあるので不用意に近づかないようにしましょう。

馬の耳03

馬の嗅覚

馬は嗅覚も非常に優れている動物です。

仲間を識別したり、食べ物を見つけたりする時などに嗅覚は使われています。

近づくと人間に鼻をすり寄せてきたりすることがありますが、これは嗅覚で人を認識しようとしているのです。

嗅覚は馬同士のコミュニケーションでも重要な役割を果たしており、牡馬が牝馬の発情を匂いで感じ取ったりします。

また、産まれたばかりの仔馬を母馬がペロペロと舐めますが、これは仔馬の匂いを覚えるためだと言われています。


【フレーメン】

馬の鼻

この写真のような表情をしている馬を見たことがある人も多いでしょう。

「馬が笑う」と形容されるこの表情はフレーメンといい、鋤鼻器(じょびき)または、ヤコブソン器官と呼ばれる嗅覚器官を空気に晒すことによってより多くの臭い物質を取り入れようとする行動だと考えられています。

フレーメンは主にフェロモンの受容を行う時に見られる行動で異性の尿の臭いを嗅いだ時などに行ったりします。

例えばタオルで牝馬を拭き、そのタオルに牝馬の匂いがついたまま牡馬の顔を拭こうとするとフレーメンをしたりします。

また、今までにあまり嗅いだことがない香りやいい香りがするときにもフレーメンをすることがあり、香水の香りやタバコの煙などを嗅いだ時などにも見られる行動です。

馬の嗅覚の感度は人間のおよそ1000倍とも言われており、いかに馬が嗅覚に優れているかが分かるでしょう。

馬の味覚

馬が好きな食べ物というとニンジンをイメージされる人が多いかもしれませんね。

もちろんニンジンが好きな馬も多いですが、他にもリンゴやバナナ、みかんなどの果物も好み、角砂糖などが大好きな馬もいます。

これらの食べ物は甘味があり、ニンジンに関してもどうやらニンジンの中に含まれている甘味が好きなようです。

食べ物の好みなどを見ているとどうやら馬は甘党のようですね。

ポカリスエットなどの甘味のあるスポーツドリンクもゴクゴク飲みます。

馬の味覚

逆に馬が嫌いな味はというと人間でもそうだと思いますが、苦味があるものを嫌う傾向にあります。

例えば飼い葉などの餌の中に薬などの苦いものが混じっていればそれをよけて餌だけを食べるというような器用なこともします。

馬の口の周りにはヒゲのような触毛があり、これで食べ物との距離感を測ったり食べ物を確かめたりしています。

また、唇も感触に敏感なので、臭いなどを嗅ぎながら唇で感触を確かめて食べ分けているのです。

ただ、馬も人間ほどではないですが馬によって好きな味や嫌いな味に多少のバラつきがあり、

例えばニンジンを嫌がって食べない馬なども中にはいたりします。

馬の触覚

乗馬において馬の触覚はとても重要な役割を果たしています。

脚で圧迫して前進する、脚をズラして駈歩を出すなど騎乗者が馬に指示を出す時にはこの触覚を利用してコミュニケーションをとっています。

特にお腹は馬にとって敏感な部分なので僅かな動きでも感じ取ることができます。

味覚のところでも触れましたが、馬の鼻先も特に感覚が敏感で唇を細かく左右に動かしながら食べ物とそうでないものを器用に分類しています。

馬房の中で乾草に小石やチップなどが混ざっていたとしても乾草だけを器用に選んで食べることができるのです。

また、夏場などにはハエやアブなどが寄ってくると敏感に反応し、尻尾や肢などを使って追い払います。

尻尾や肢が届かないところに虫が止まった場合は皮膚をブルブルと震わせて虫が止まらないようにしています。

あれだけ大きな身体をしているのに小さな虫が止まっただけですぐに反応するところを見ても馬は敏感に触覚を感じることができると言えるでしょう。

馬の触覚

この写真のように馬を放牧に出すと気持ちよさそうに寝転んで砂浴びをしますが、これも元々は皮膚についている寄生虫を落とすための行動だと言われています。

砂浴びが好きな馬は多く、この行動も触覚を利用した馬にとってのストレス解消法と言えるかもしれません。

馬は五感が優れていますが、とても臆病な動物です。
安心感を与えて信頼関係を築いていきましょう♪