馬の豆知識

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馬の進化2 ~肢の変化~

馬の進化と肢の変化

馬の最古の祖先であるヒラコテリウム(エオヒップス)が地球上に誕生して以来、現代まで馬は体の様々な部位を変化させ進化してきました。

その体の進化の中で最も大きな変化が肢の変化です。

ヒラコテリウム(エオヒップス)の頃は主に森林の中で生活していましたが、気候などの変動によって森林が減り、生活の場所が草原に変わっていきます。

草原で生活するようになると身を隠す場所も少なくなるので、肉食動物から逃れて生き延びていくためには速く走らなければいけません。

そこで肢の指を減らし、蹄を持ち、肢が長くなり収縮性のある靭帯を備えることにより速いスピードで走ることができるようになっていくのです。

馬の進化と肢の変化の過程

【馬の進化と肢の変化の過程】

ヒラコテリウム(エオヒップス)以降の馬の進化

馬の最古の祖先、ヒラコテリウム(エオヒップス)は前肢は4本の指、後肢は3本の指を持っていました。

約4000万年前の始新世後期から漸新世(3200万年前~2400万年前)に進化したメソヒップスになると、前肢も3本指(前肢の第5指が退化)になっており、前肢、後肢ともに3本指となりました。

しかも第3指にあたる中央の指が発達して大きくなり、その左右の指はかろうじて地面に着地するぐらいの状態にまで小さくなっていました。
なので、この頃にはすでに中央の指(第3指)で体重のほとんどを支えるようになっていたと推測されます。

メソヒップスの想像図

【メソヒップスの想像図】

メソヒップスはヒラコテリウム(エオヒップス)に比べて体も大きくなり(体高約50cm~60cm)肢もより長くなっていました。
徐々に速く走るために適した体つきになっていったのです。
また、顔や鼻、首も長くなり、歯は6つの臼歯を持っており草をすりつぶすのに適した形になっていました。

メソヒップスの骨格標本(国立科学博物館

【メソヒップスの骨格標本(国立科学博物館 】

指は3本で中央の指が発達している

【指は3本で中央の指が発達している】

メリキップスは中新世中期~鮮新世に繁栄していました。
メソヒップスよりもやや体が大きくなり、体高はおよそ1mになっていました。

世界的な気候の変化によって草原が拡大したことにより、ウマ類はその進化の過程で木の葉食性から草食性に変化していきましたが、このメリキップスは草食性に進化したウマ類の最初の種類とされています。

その証拠としてメリキップスは臼歯の高さが高くなっていました。

草は葉のなかにガラス質の微粒子を含んでいるため草を食べると歯が早くすり減りますが、高い臼歯を持つことでこのすり減りに対抗しているのです。

メリキップスの肢も3本指でしたが、中央の指(第3指)はになっておりその左右の指はさらに小さくなっているため地面に着いておらず、中央の指のみで体を支えていたと推測されます。

メリキップスの骨格標本

【メリキップスの骨格標本(国立科学博物館)】

左右の指は小さくなり地面に着いていない

【左右の指は小さくなり地面に着いていない】

プリオヒップスは約500万年前に誕生した生物です。

蹄の両側にある2本の指はほぼ完全に退化しており、ついに一本指となりました。

プリオヒップスはウマの進化の歴史に登場する最初の単指趾動物、つまり一番初めに一本指となったウマということになります。

長くて細い肢を獲得したプリオヒップスは今までの生物よりも速く走ることができるようになりました。

プリオヒップスの想像図

【プリオヒップスの想像図】

プリオヒップスは体高も1mを超えており、歯の形状なども現代のウマによく似ていました。

プリオヒップスは現在のウマの直接の先祖、もしくはそれに最も近い存在だと考えられています。

ヒラコテリウム(エオヒップス)から途方もなく長い年月をかけてウマは進化を繰り返してきました。

そして、ついに約100万年前に現代馬の先祖であるエクウス(エクウス・キャバルス)が現れるのです。

ユーラシア大陸の中東地区で誕生したと推測されているエクウスは馬・シマウマ・ロバなどの祖先となり、世界中にその生息地を広げていきました。

指の数は一本、体高も約120cmにまで大きくなり、歯は草をすり潰すのに適した形に、首は草を食べやすいように長くなり、目は広い視野を持つために位置が変化していきました。
エクウスはこれらの現代の馬の特徴を全て備えていたのです。

エクウスは世界各地の気候や環境に適応しながら更に進化を続け、人間に家畜化され用途に合わせて品種改良されます。

そして、現在の様々な馬の品種が誕生したのです。

様々な品種が誕生

【現代馬のエクウスは進化を続け、様々な品種が誕生している。】