さて、ヒラコテリウムとエオヒップス、なぜ二つの名前の呼び方があるのでしょうか。
ヒラコテリウム(エオヒップス)の化石は1830年代にイギリスで初めて発見されました。
しかし、当時はその化石が馬の祖先のものであるとは考えられていませんでした。
そして、頭蓋骨の特徴や目の位置、歯の形などからその化石はイワダヌキ科に属するハイラックス(写真)という生物に近いと判断されたのです。
その化石には「ハイラックスに似た獣」を意味するヒラコテリウムという馬には全く関連のない学名が付けられました。
それ以降もヨーロッパで同じような化石が発見されましたが、どの化石もウマ科動物との関連付けはされず、馬の先祖の化石とは思われていませんでした。
そしてその後、北アメリカ大陸で馬の祖先の化石がたくさん発掘されます。
その発掘された化石を時代順に並べると馬の進化の過程、体の大きさの変化や肢の変化などがとてもよく分かるものでした。
北アメリカ大陸で発掘された化石はギリシャ語で馬を意味するヒッポスにちなんで◯◯ヒップスと次々に命名されていきます。
その中で始新世(エオシーン)の地層から発掘された最も古い馬の祖先には「始新世のウマ」を意味するエオヒップスと名付けられました。
しかし、ここで困ったことが起こります。
このアメリカで発見されたエオヒップスは実はかつてイギリスで発見されたヒラコテリウムと同じ生物だったことが判明するのです。
命名されたのが早い方を正式な名前とする決まりから、馬とは全く関係のない名前であるヒラコテリウムの方を正式な学名とせざるを得なくなりました。
ただ、エオヒップスの名称の方が生物自体の位置付けをよく表していることから書籍などではエオヒップスの方を表記する場合もあります。